「要請というか誘導」。この言い回し、どこか似ている。「募ったが募集していない」。発言者も発言場所も内容も違うが、何が言いたいのか分からないということでは違いがない。
新型コロナウイルスを巡る県の対応について、飯泉嘉門知事が発言を修正した。クルーズ船を下船した県内在住者6人に、「検査を要請していたが、本人の了承を得るのに時間がかかった」のではなくて、要請はしていなかったそうである。
知事の説明通り「誘導」したつもりだったとしたら、なお変だ。県の意図通り、たちまち検査を受けたのは6人のうち2人だけ。どこへ誘導したのだろう。
釈明に疑問は尽きないけれど、県の対応はあきれたものだ、とまでは言えない。ただ、同じ日に公表した愛媛県の速やかな対処に、両県の危機感の違いがくっきりと表れた。愛媛では既に下船者全員の検査を終え、陰性の結果を得ている。
正しい情報を正確に伝えることが危機管理の第一。悲しいことに、事態に乗じてデマを飛ばしたり、ひともうけをたくらんだりする連中がいる。悪意はなくても不確かな情報がパニックを招くことも。
要請に誘導。言葉尻をあげつらって知事をいじめるな、との批判もあろうが、案外、本質的な問題である。先頭に立つトップの言葉があやふやでは、到底この非常時を乗り切れない。
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March 02, 2020 at 03:00AM
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鳴潮 3月2日付｜鳴潮｜徳島新聞 - 徳島新聞
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