【６月12日付編集日記】「両行」の勧め - 福島民友

　初めて旅に出た若旦那が、船に乗るか悩み、持参した「指南書」の言葉「急がば回れ」に従い陸路を選んだ。すると乗るはずだった船が難破し、難を逃れた。そんなこんなで帰宅すると土産の菓子が腐っている。また指南書をめくると「うまいものは宵の内食え」。上方落語「指南書」である

　▼こんなふうに日本では正反対の意味の、ことわざ同士が目につく。「急がば回れ」に対し「うまいものは...」、または「善は急げ」。「うそつきは泥棒の始まり」に対して「うそも方便」がある

　▼矛盾のようだが、三春町の福聚寺住職で芥川賞作家の玄侑宗久さんは、禅にも両極端双方を肯定する「両行」という考えがあり「両極端の考え方を両方踏まえたうえで、現実的な判断は直感で決めよ、と教えているかに思える」という（「『両行』とこころのレジリエンス」）

　▼この日本人の両行気質、極端な気候のせいではないかと思う。夏暑く冬寒い。最近の県内も、かんかん照りの猛暑から一転、きのう梅雨入りした。ちょうどよい日はないのか

　▼だが、嘆いてばかりもいられまい。コロナ禍という、厄介な状況でもある。暑い日は周りに気を配りつつマスクを外したり。そこは、それ、両行で。

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June 12, 2020 at 06:56AM
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