新型コロナウイルスは細胞内で増殖する際、遺伝子配列の“コピーミス”を起こして変異する。いま全国で猛威を振るうのは３月以降に欧州から入ったウイルスが変異した新タイプで、６月中旬に突如現れたという。国立感染症研究所のチームが解析した▼春の流行期より重症化の割合は低いことから「弱毒化した」との見方もあるが、詳しいことは分かっていない。ウイルスの変異は１カ月に２カ所のペースで起きるとされる。強毒化しないよう祈りつつ予防に励むしかなさそうだ▼こちらはミスなくコピーされたことが批判されている。広島市と長崎市の「原爆の日」に、それぞれ開かれた平和式典での安倍晋三首相のあいさつ文だ。地名などを除けば、ほぼ同じだった▼核廃絶に向けた強い意志が込められていれば、同じ言葉を使っても怒りや嘆きを呼ぶことはなかっただろう。意志が見えないから「被爆への無関心が使い回しという形で出た」と思わせるのだ▼そんな落胆を、さらに増幅させたのではないか。いわゆる「黒い雨」を巡る広島地裁判決について、国などがきのう控訴した。国の援護対象区域外にいた原告全員を被爆者と認めるかどうかの判断は、再び高裁に委ねられた▼援護対象区域の拡大も視野に検証を始めるというが、幅広く援護するのなら判決を受け入れた方が近道ではなかったか。被爆７５年。対象者の高齢化は着実に進んでいる。政府はいつ、核兵器という“猛毒”のない世界の実現に向けて新たな一歩を踏み出すのだろう。
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August 13, 2020 at 07:26AM
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８月１３日付 | 新生面 | コラム - 熊本日日新聞
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