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北斗星(8月18日付) - 秋田魁新報

 放り投げられたドロップの缶が夏草の茂みに落ちた。その拍子にふたが取れ、小さな白いかけらが転げ出る。ホタル数十匹が点滅しながら飛び交った。そんな印象的な描写から物語は空襲の場面にさかのぼる

▼野坂昭如さんの短編「火垂(ほた)るの墓」は1945年、敗戦前後の神戸などが舞台。海軍の父は音信なし、母を空襲で失い必死に生き抜こうとする兄妹を描く。兄は中学生、白いかけらは先に亡くなった4歳の妹の骨だった

▼後に制作されたアニメ映画を見て物語を覚えている人もいるに違いない。小説は独特の文体で戦争のむごたらしさをえぐる。句点を少なくし読点で文をつなぐ。そのリズムが飢えにさいなまれる2人を描き出して切ない

▼別の作品でも野坂さんは戦中の子供について書く。「昭和二十年頃に、五歳から十歳くらいだった子供ほど、みじめな存在はなかった」。物心ついた頃もう甘い物はなく、大人のようにおいしい物をたらふく食べた思い出もない。生きるため菜園から盗むしかなかった

▼火垂るの墓の兄妹が生きた最後の夏から75年、全国戦没者追悼式に参列した93歳の男性が語っていた。「政治に携わっている方々は私たち(戦争体験者)とは異質な考えを持っていると思う。間違った方向に行かないよう常に念願している」

▼小説と同様に幼い妹を失った野坂さんは死の間際まで言い続けた。「戦争をしてはならない。巻き込まれてはならない。戦争は何も残さず悲しみだけが残るんだ」

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August 18, 2020 at 07:22AM
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