写真や映像を見るたびに目を背けたくなる。インド洋のモーリシャス島沖で発生した日本の貨物船の重油流出事故だ。「インド洋の貴婦人」と称された美しい観光地が、広範囲にわたって黒く染まった。生態系への影響は計り知れない
▼座礁した貨物船は真っ二つに割れた。この先も重油が海に流れ続ける懸念がある。一日も早い油の回収が望まれる
▼船はなぜ浅瀬を航行したのか。地元紙によると、複数の乗組員が警察に「ネット接続するため島に近づいた」と述べたという。事故直前に乗組員の誕生日会を開いていたとの話もある。事実ならば、信じ難い緊張感のなさだ
▼現地では照りつける日差しの下、住民たちが流出した重油をサトウキビの葉でかき集めたり、砂浜でスコップなどを使って回収したりして必死に原状回復を図っている。有害物質を吸い、体調を崩す人が続出しているそうだ
▼重油流出で思い出されるのは、１９９７年に起きたロシア船籍タンカーの事故。破損した船首部と重油が福井県に漂着し、全国から多くの人が除去作業に駆け付けた。潟上市出身の水中写真家中村征夫さんもその１人。「人海戦術と自然界のバクテリア分解が相まって越前の海は見る見るよみがえった」と振り返る
▼モーリシャスの自然が元に戻るには数十年かかるとも言われる。それでも「海は自浄作用で必ず回復する」と中村さん。その言葉に希望を抱く。貴婦人を救うために日本は何ができるのか考えねばならない。
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August 20, 2020 at 07:31AM
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北斗星（８月２０日付） - 秋田魁新報
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