窓を開ける、カレーを作る、学校に行く。生活は記憶を組み合わせることで成り立っている。今まで覚えたことが頭に浮かんで、意識せずとも体が動くのは脳が働いている証しだ
▼記憶は、脳を流れる弱い電気で呼び起こされる。マウスを使った研究では、二つの記憶を人工的に関連付け、現実には経験していないことを経験したこととして記憶させることができるようになっている（井ノ口馨著「記憶をあやつる」）
▼旧制高校に入学して６日目。あの日は実家に向かう列車の中にいた。駅に着くとピンク色の雲が大きくなっていくのが見えた。爆心地に入ったのは翌日。同級生を捜して歩いた。後に福島大で教壇に立った星埜惇さんの記憶は今なお鮮烈だ
▼諦めて帰ろうとしていたところで、広島駅近くに寮で同室の２人が倒れているのを見つけた。１人は帰りのトラックの荷台で覚えたての寮歌を口ずさんでいたが、気が付けばその声は止まっていた。もう１人も寮で２日後に息を引き取った
▼このような記憶を抱えて７５年を過ごしてきた星埜さんにただ頭が下がる。きょうは広島忌。今を生きる人たちが誰かのあの日の記憶を自分のものにしていく日だろう。重くても目を背けずに。
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August 06, 2020 at 06:09AM
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【８月６日付編集日記】広島忌 - 福島民友
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