「世界一貧しい大統領」と呼ばれた人がいる。南米ウルグアイのホセ・ムヒカさん（８５）だ。本当に「世界一」貧しかったのかどうかは分からない。尊敬の念を込め人々はそう呼んだ
▼退任後は上院議員を務め先日政界を引退。引退演説で若者に向け呼び掛けた。人生の成功とは「（人を）負かすことではない。倒れるたびに起き上がるということだ」。その生き方は言葉通りだ
▼７歳で父を亡くし１０代から政治活動を開始。独裁政権と闘うゲリラ組織に身を投じ４度も投獄された。７４歳で大統領に。古い愛車を運転して公務に向かい、毎月の報酬の９割近くを寄付。質素な生活を貫いた
▼「政治家は世の中の大半の国民と同じ程度の暮らしを送るべき」が持論。特権階級のような生活をし自分の利益のために政治を動かせば信頼を失う。人々の信頼が好きだから「このダンス（政治）に加わっている」と語る（池上彰著「ほんとうの豊かさって何ですか？」）。こんな大統領が世界にいたこと自体、奇跡に思える
▼米大統領選討論会では「不動産王」と呼ばれるトランプ氏がうそを連発し相手候補を非難。同じ政治家でなぜ、こうも違うのか。ムヒカさんの言葉に触れると、疑問が膨らむ
▼問題は政治をどう捉えるかだ。ムヒカさんはこう考える。集団がある所に争いは必ず起きる。争いを乗り越えて、いかに共存可能なものにしていくか。それが政治だ―。そんな政治をこの国でも見てみたい。それは過ぎた望みなのか。
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October 25, 2020 at 07:43AM
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北斗星（１０月２５日付） - 秋田魁新報
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