稲刈りが終わった田んぼの横を車で通り過ぎながら思い出した。刈り取った稲わらで作られたわら細工の数々。美郷町の町歴史民俗資料館で見たことがある。履物、手袋、ほうきに、今で言うコート（けら）まで。かつて農村では必要なものは自分で手作りするのが普通だった
▼こちらの展示は今必要とされるものを作ろうという意欲にあふれている。秋田市の県第２庁舎１階ホール。新型コロナウイルスの感染防止のために開発された製品や試作品だ
▼透明樹脂で顔を覆うフェースシールド、杉の台座が付いたアクリルの仕切り板、足踏み式の消毒液スタンド…。電子部品製造業や木工業などの県内企業が、これまで培った技術を生かして医療現場の支援に乗り出した
▼企業によっては、地元の病院と使い勝手について意見交換しながら改良に取り組む。医療分野とは縁がなかった業者にとっては、新製品開発や販路開拓につなげるチャンスでもある
▼先の資料館の展示室入り口には、わら細工グループによる案内板が掲げられている。わら細工は農家が自給自足の生活の中で必然的に生み出し、生活を支えたが、手仕事のぬくもりがあるという内容だ
▼使う相手のことを思いながら作られたからこそのぬくもりだろう。コロナ禍に直面し、医療物資不足に悩んだ医療現場を思って県内企業が作った展示品にも同じぬくもりが宿っているのではないか。ホールの展示に終わらず、多くの人に実際に使われてほしいと願う。
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October 06, 2020 at 07:51AM
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北斗星（１０月６日付） - 秋田魁新報
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