１０年以上も前、新緑の時期に北秋田市阿仁の露熊（つゆくま）山峡を訪れたことがある。道路沿いに立っている「観光秋田三十景」の看板に引かれて立ち寄ったのだが、あまりの荒廃ぶりに恐れをなし、すぐに引き返した
▼三十景に選ばれた１９５２年当時は、県内屈指の観光地だったはずだ。３０カ所のうちの１１位。当時の本紙は「奥入瀬渓流のよう」「滝あり淵あり、奇岩は素晴らしい美しさ」と絶賛している。そんな景勝地もここ数十年は住民も寄り付かず、荒れるに任されていた
▼その山峡がこの夏以降、地域住民の手で整備された。廃校になった地元小学校の卒業生らが荒廃に心を痛め、手弁当で歩道の整備や草刈りを開始。以前住んでいた住民や地元企業も続々と協力を申し出て階段や手すりの修復、土砂撤去を行った
▼「すぐできること」「少し工夫すればできること」「予算がないとできないこと」。地域の課題を住民目線で三つに整理して解決策を探る。そんな実践を重ねた町がかつて県北にあった。行政頼みの風潮が強かった中で、住民主体の地域づくりを進めるヒントと評された
▼露熊山峡の取り組みも、住民が周囲を巻き込んで少しずつ力を持ち寄れば解決できることが多いことを教えてくれる。「やればできる」と勇気をもらった人も多いのではないか
▼長い間眠っていた「宝物」のような観光地の復活を、住民とともに喜び合いたい。現地では１１月ごろまで紅葉が楽しめるという。まだ見ぬ光景に心が躍る。
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October 16, 2020 at 07:51AM
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北斗星（１０月１６日付） - 秋田魁新報
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