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中日・大野雄の沢村賞は妥当…現代野球で極めてまれな10完投、私が受賞した時の内容を超えていた【今中慎二さん特別寄稿】 - 中日新聞

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対談で握手を交わす大野雄(左)と今中慎二さん=2019年

対談で握手を交わす大野雄(左)と今中慎二さん=2019年

  • 対談で握手を交わす大野雄(左)と今中慎二さん=2019年

 中日・大野雄大投手(32)が球団では16年ぶり9人目(11度目)となる沢村賞を受賞した23日、1993年に同賞を手にした元中日投手で本紙評論家の今中慎二さん(49)が特別寄稿。コーチ時代に指導した教え子の偉業を「自分以上」と評価した。

 ◇   ◇

 いずれはチームの軸になってほしいと思っていたが、今年の大野雄は期待以上の存在になった。沢村賞も妥当だ。現代野球では極めてまれな10完投だけではなく、他チームがお手上げになるほど圧倒した。私も1993年に受賞したが、時代を考えれば、今年の内容は当時を超えていたのではないか。巨人・菅野も素晴らしかったが、インパクトは明らかに上だった。

 私が2軍投手コーチだった2012年、大野雄は春先、2軍にいた。真っすぐだけなら間違いなく1軍でも通用する。あとは変化球と、投げるスタミナ。ただ一方で、驚くほど走るスタミナがあった。何とか投球に生かせないかと思っていたが、投げる以外にスタミナをつける方法はない。翌年の春季キャンプ、1軍コーチになった私は徹底的に投げ込ませた。4日間の1クールで600球くらいか。その年、初の2桁勝利を飾った。

 今年の大野雄が飛躍した理由は「自信」以外にないと思う。真ん中付近に投げておけば大丈夫だと思う自信だ。だから少しくらい四球を出しても動揺しないし、下位打線には手を抜ける。ツーシームという武器が安定したことでペース配分も覚え、試合中盤にギアを上げて抑えることができるようになった。

 コロナ禍による今年の過密日程も結果的に良かったのかもしれない。6連戦では誰かが完投しないと救援陣が疲弊する。大野雄は周囲の期待を受け止め、役割を自覚し、完投することが当たり前になった。祖父江や福が1年間、耐え抜けたのも完投能力があるエースの存在が大きかった。

 ただ、今年で満足しては困るし、そんな気持ちは本人にもないだろう。大野雄はコーチ時代に願っていた選手像よりも上の存在になったが、こうなったら求めるのはさらに上。来年はローテを組み替えてでも巨人にぶつけてもらえるような投手になってほしいし、苦手な屋外でも勝てる投手になってほしい。エースとして巨人を倒して優勝してほしい。

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