もう日が暮れて車窓の外は暗かった。福島県浜通りを通るＪＲ常磐線。停車する駅の名は浪江、双葉など東京電力福島第１原発事故の被災地としてこの９年半余り接してきた地名だった。暗がりに目を凝らすと明かりのついていない家が並んでいる。本県では見たことがない光景だ。住民の避難が続く現実にはっとした
▼福島では原則立ち入り禁止の帰還困難区域が今も７市町村に広がる。常磐線は夜（よ）ノ森（もり）（富岡町）、大野（大熊町）、双葉（双葉町）の３駅の周辺地区で３月に避難指示が解除され、全線復旧した。ただし実際に住民の帰還が始まるのはまだ先だ
▼双葉町の調査によると、避難住民のうち町に戻りたいと答えたのは約１割。戻らないと答えたのは６割を超えた。それを踏まえた上で、住民が戻って来たくなる町づくりを進めるという
▼同町では今夏、避難指示が解除された地区に東日本大震災と原発事故を語り伝える「伝承館」が開館。町は帰還する人の働く場確保も積極的に進めており、今までに１７件の企業立地が決まった
▼事故から１０年となる来年３月、東京五輪・パラリンピックの聖火リレーが福島県から始まる。町も通過する予定だ。菅義偉首相は先月、「復興した姿を世界に発信する」と語った
▼復興はまだこれからという現実とのずれが気になる。だが、リレーが通過する風景を見て帰還を決意する人もいるかもしれない。地元市町村が聖火リレーというチャンスをどう生かすか注目したい。
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December 11, 2020 at 07:54AM
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北斗星（１２月１１日付） - 秋田魁新報
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