かつて朝廷や幕府の許可を得た上で、各地の神社などが編集した暦が売られていた。神社の手伝いをしている人らが箱を担いで売り歩いたり、街角などで立ち売りしたりしたという。年末の風物詩の一つで「暦売」と呼ばれた。冬の季語として、歳時記に載っている
▼現代の暦売と言えば書店や雑貨店を指すのだろうか。店内には来年のカレンダーが並ぶ。国内外の美しい風景やアイドル、愛らしい犬や猫などいずれも趣向を凝らしたものばかり。開運カレンダーというのもある。まさに百花繚乱（りょうらん）である
▼ここ十年来、日付の下に予定を書き込めるスペースがある月めくりのカレンダーを使っている。家族への伝言板代わりにもなる
▼作家の向田邦子さんも同様のカレンダーを使っていた。「豆腐」と題するエッセーに「端がめくり上がり、赤鉛筆やボールペンの書き込みのある十二カ月のそれを見ていると、確かにその日はこんなことがあったと、すぐに思い出せる日もある」とつづっている
▼古いカレンダーを外して、新しいものに掛け替える際の気持ちにも触れている。「感慨といえるほどご大層なものではないが、多少しんみりした手つきになって、古いカレンダーをすぐに紙くず籠にたたき込むには忍びなく、めくって眺めたりしている」とも記している
▼月めくりのカレンダーは残すところあと１枚になった。もうすぐ役割を終えることになる。「お疲れさま」と声を掛けながら１年を振り返るのも悪くない。
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December 08, 2019 at 07:46AM
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北斗星（１２月８日付） - 秋田魁新報
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