宮崎駿監督のアニメーション映画には主人公が空を飛ぶ物語が多い。少年が空に浮かぶ伝説の城を探す「天空の城ラピュタ」もその一つ。冒険が始まるのを前に空への憧れをかき立てるものとして、白く輝く大きな雲が描かれている
▼その雲をファンは「二三（にぞう）雲」と呼ぶのだそうだ。美術監督として背景画を手掛けた山本二三さんが、描き方を編み出したことに由来する。インタビューの中で、中学時代に紙を湿らせると絵の具がにじみ、雲らしくなると学んだと語っている。アニメ業界に入った後も研さんを重ね、ラピュタ制作の頃に技法が完成した
▼山本さんの作品展がきのう、秋田市の県立美術館で始まった。ラピュタはもちろん、故高畑勲監督の「火垂（ほた）るの墓」や宮崎監督の「もののけ姫」、細田守監督の「時をかける少女」など、名作の背景画を中心に２２７点が並ぶ
▼もののけ姫の制作に当たって山本さんは鹿児島県の屋久島を訪れ、縄文杉を取材した。その姿をモデルにして巨木ばかりの太古の森を描いたという。こうした努力の積み重ねが、物語の世界にリアリティーを与えるのだろう
▼アニメ以外の作品も展示されている。東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市の奇跡の一本松をテーマにした連作が目を引く。作家新井満さんが文を担当した絵本「希望の木」の挿絵である
▼生き残った松の木の精霊が主人公。復興への希望を込めると同時に、親から子への「命のバトンリレー」の大切さを訴える。
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December 10, 2019 at 07:38AM
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北斗星（１２月１０日付） - 秋田魁新報
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