北斗星（５月１４日付） - 秋田魁新報

　「フェイクニュース」という言葉が初めて本紙に登場したのは２０１７年１月。トランプ氏が米大統領当選後初の会見で、自身に批判的な記者の報道内容を非難したと伝える記事だった

▼本県に関わりの深い出来事を巡って、この言葉が突然使われたので驚いた。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」に絡み、政府が秋田市新屋に配備するという計画を断念し、県内で新たな候補地を検討すると報道各社が報じたのを、河野太郎防衛相が「フェイクニュース」と一刀両断にした

▼何が本当なのかと戸惑った読者もいるだろう。だが、この発言は背景を注意深く読み解く必要がある

▼各社の報道があったのは今月６日。河野氏がツイッターで「フェイクニュース」発言を重ねたのは丸１日以上たった翌７日の夜遅くだ。その間に何があったのか。この日午前、佐竹敬久知事が「政府からの連絡は全くない」「国防上の機密がべらべら漏れている。ますます不信感がわく」と述べ、防衛省への不快感を報道陣にぶちまけた

▼翌８日の会見で河野氏は「知事はフェイクニュースに対して不信感を発言したと理解している」と語った。その言葉からは知事の反応を意識した政治的な思惑がのぞく

▼１７年末、出版大手・三省堂の「今年の新語」でフェイクニュースが第５位に選ばれた。その語釈には、こんな一節がある。「自分に不利な報道を戦略的に虚偽だと主張する際にも用いられることがある」。言い得て妙である。

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May 14, 2020 at 07:44AM
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