格式のある家の娘が失敗をすると、「私がやりました」と身代わりになる―。江戸時代にはそんな尼がいたそうだ。科負比丘尼（とがおいびくに）と呼ばれた。娘がおならをしてもすかさず責めを引き受けたという
▼思いも寄らない仕事があったものだと感心していたら、現代にも比丘尼に似た役回りがあるようだ。賭けマージャン問題で辞職した前東京高検検事長、黒川弘務氏の処分を巡る政府の説明が二転三転し、そう感じた
▼黒川氏を懲戒ではなく訓告処分とした経緯に関し、森雅子法務相は当初「内閣で決めた」と説明。安倍晋三首相が「検事総長が処分した」と発言すると、判断したのは法務省と検察庁だったと前言を翻した。批判の矛先を官邸からそらせようと必死に見える
▼検事長は内閣が任命し天皇が認証する「認証官」。懲戒にするか否かを決める権限も内閣にある。「検事長の身分に関わることを法務省だけで決められるはずがない」との石破茂自民党元幹事長の指摘はもっともだ。政権への信頼は根底から揺らいでいる
▼黒川氏の辞表提出を受け、安倍首相は自身に「当然責任がある」と語った。今まで度々「責任」を口にしたが、国民が納得できる説明責任を果たしてきたとは思えない
▼世論調査では内閣支持率が２年ぶりに４０％を割った。黒川氏の訓告処分については「甘い」が７８・５％。厳しい評価から浮かび上がったのは、自らの責任に関わる問題に真摯（しんし）に向き合わない首相に対する不信感ではないだろうか。
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June 03, 2020 at 07:51AM
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北斗星（６月３日付） - 秋田魁新報
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