【６月８日付編集日記】産地化プロジェクト - 福島民友

　江戸前期の農学者宮崎安貞が約３２０年前に刊行した「農業全書」は、農民の立場で栽培技術を教える農書として全国に広がった。知識不足から苦労が報われない農家のため、自分の農業経験や中国の農書から得た知識を伝え、長く版を重ねた

　▼全書では穀物や野菜類など、数多くの農産物の栽培方法を解説している。宮崎は全国を旅して地域の農業に目を向けたとされ、農地に向き合う農家の在り方では、「気候風土に応じ、季節に従って耕作につとめる」と説いている（「日本農書全集」農山漁村文化協会）

　▼いわき市が中山間地域の気候などに適した特色ある農産物の振興に向け、産地化プロジェクトを始めた。市内２地区にモデルほ場を設け、ＪＡ福島さくらなどの協力で、野菜の実証栽培を進めている

　▼生産するのは、太くて短い形と歯ごたえが特徴の伝統野菜「小白井きゅうり」など３品目。生産技術の確立に力を入れ、耕作放棄地の活用も視野に、地元の農業を支える特産物として売り出すことを目指す

　▼宮崎は「よく農術を知った後、農事の実践に励むべし」と心得を記している。気候風土をうまく取り込んだ実証栽培の成果が、中山間地域を元気にする契機になればいい。

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June 08, 2020 at 06:41AM
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