「とにかく連中に言われたとおりにするんだ。手は見えるところに出しておけ。いきなり動いたりするんじゃない…」。米国の小説で黒人家庭の父が主人公の１２歳の少女に、警官に呼び止められた際の注意として語った言葉だ
▼「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ（あなたがくれた憎しみ）」（アンジー・トーマス著、岩崎書店刊）の一場面。２０１７年に全米でベストセラーになり、翌１８年に映画化されている
▼１６歳の高校生に成長した主人公は乗っていた車が白人警官に停止を命じられ、運転していた幼なじみが理由もなく射殺される。事件を機に人種差別、格差、貧困などの問題が次から次へと主人公に突きつけられていく
▼米中西部で黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件に対する抗議デモが全米、そして世界に広がっている。米国のデモは一部暴徒化し、警察とデモ隊の衝突で死傷者も出ている
▼冒頭の父の教えは米国で黒人に対する警官の暴力が繰り返されてきた表れだ。小説でも激しい抗議デモが起き、パトカーの炎上、催涙弾が飛ぶ場面とともに描かれる。ただしデモの制圧に軍の投入を辞さない強硬姿勢を示すような大統領は登場しない。現実の世界の方が小説よりもよほど荒っぽい
▼英独首脳が人種差別と暴力に批判の声を上げたのは当然だ。一方で日本政府から明確なメッセージが発信されないのは残念な気がする。差別が決して許されざる行為であることを、声を大にして訴えるべき時だと思うが。
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June 08, 2020 at 06:55AM
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北斗星（６月８日付） - 秋田魁新報
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