５０年ほど前、こんな試算があった。地図上で東京、大阪、名古屋の三大都市の中心部にコンパスの針を置き、それぞれ半径５０キロの円をぐるっと描く。総人口の３割が三つの円に収まったという。人口の偏りがよく分かる。「日本列島改造論」（日刊工業新聞社）で紹介されていた
▼著者は田中角栄元首相。三大都市圏に人口が集中することへの問題提起だった。その後も歴代政権は都市に集中する人や省庁、大企業などを地方に分散させようと取り組んだ。「多極分散型国土」を目指し、地方振興のために自由に使える１億円を自治体に配った首相もいた
▼高速道路や新幹線、航空路線の整備は進んだが、地方から都市への人口流出は変わらなかった。安倍晋三首相が掲げる「地方創生」でも、企業の地方移転や個人の移住はなかなか進んでいない
▼それが今、人の流れが変化する兆しが見えてきた。新型コロナウイルスの感染拡大で一極集中がリスクと見られるようになったためだ。国の調査では三大都市圏の若い世代ほど地方移住への関心が高い
▼フランスの思想家ジャック・アタリさんが本紙で予測した。「もはや会社に近い大都市に住む必要はなく、田舎や小さな町に住み、働くようになる」
▼コロナ禍で強いられた在宅勤務やパソコンによる遠隔会議で、会社から遠く離れていても仕事は可能と人々は気付いた。ウイルスは生活や仕事だけでなく、政治が実現できなかった人の流れの変化ももたらすのだろうか。
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August 19, 2020 at 07:41AM
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北斗星（８月１９日付） - 秋田魁新報
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