爽快な風を受けながら山の稜線（りょうせん）を歩いて行くと、ゆったりとした気持ちになっていく。「ささいなことに気を取られ、トゲトゲした気分になっていたことがつまらないことに思えてくる」
三春町出身で、世界最高峰のエベレストに女性として世界で初めて登頂に成功した登山家の田部井淳子さんは著書「山を楽しむ」（岩波新書）の中で、山登りの魅力をこう記している。
山は木材や山菜など生活の糧をもたらし、神として信仰の対象ともされてきた身近な存在だ。近年は観光や健康づくりの場としての役割も大きくなっている。あすは山の日。山の恵みに感謝し、かけがえのない自然環境の保護に思いを巡らせる機会としたい。
本県は面積の４分の３を山地が占める。広さは約１０４万ヘクタールで全国４位だ。随筆家で登山家の深田久弥が記した「日本百名山」には、吾妻連峰（西吾妻山）、安達太良山、磐梯山、燧ケ岳など、七つの山が選ばれている。ほかにも、各地に地元の人に親しまれている山がある。
山の楽しみ方は頂上を目指すことに限らない。かれんに咲く高山植物や山の姿を写真に収めてみたり、低い山をゆっくり歩きながら、気の合う仲間と触れ合ったりするひとときもいい。自転車で吾妻・安達太良連峰の大自然を走り抜けるイベントが開かれるなど山のレジャーは多様化している。自分に合った山との関わり方を考えてみてほしい。
県警によると、今年の山岳遭難は５日現在で２１件で前年同期比で２６件減となっており、けが人も減っている。新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛で山に入る人が少なくなっていることが大幅減の背景にあるとみられる。
県警は、山に登る際には自分の体力や技術に合った山を選び、天候などを調べた上で、地図やコンパスなど十分な装備を持っていくよう呼び掛けている。家族などに行き先や日程、同行者などを知らせた上で登山届を提出し、万が一遭難した場合に早く気付いてもらえるようにしておくことが重要となる。
環境省裏磐梯自然保護官事務所によると、県内の国立公園では４０年以上にわたり環境省や県、関係市町村などでつくる自然公園清掃協議会が清掃活動を続けており、収集されるごみは年々少なくなっている。同事務所は環境意識の高まりが影響しているとみている。ごみの持ち帰りを徹底するなどして、美しい山々を未来に残していくことが大切だ。
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August 09, 2020 at 06:52AM
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【８月９日付社説】山の日/自分に合う楽しみ方探そう - 福島民友
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