郡山市にある開成山の地名は、中国の古典「易経」にある「開物成務（かいぶつせいむ）」に由来するという。「安積開拓の父」といわれた中條政恒の座右の銘で、人知を開いて仕事を成し遂げる―との意味がある
▼中條は、作家宮本百合子の祖父だ。百合子は生まれも育ちも東京だが、幼い頃は夏休みになると郡山を訪れ、祖父が心血を注いで開拓した開成山で過ごしていた。祖父宅では特に書斎がお気に入りで「実に夏休みの間の探検場所であった」と随筆に記している
▼開成山での暮らしは百合子に大きな影響を与えた。貧困に苦しむ開拓農民の姿を描いた小説「貧しき人々の群」をはじめ、郡山を舞台にした作品を多く残した。百合子にとって文学の出発点は、開成山で過ごした夏休みにあったのだろう
▼新型コロナウイルスの影響で、今年の夏はいつもと違ったものになっている。子どもたちの夏休みは大幅に短縮され、お盆休みに入った大人も遠出をしていいものかと戸惑う
▼外出をすることが難しいこの夏、じっくり本と向き合うひとときをつくってみてはどうだろうか。両親や祖父母の本棚をのぞいてみてもいい。お気に入りの本はきっと、すてきな探検へと心をいざなってくれるに違いない。
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August 09, 2020 at 06:52AM
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【８月９日付編集日記】夏の読書 - 福島民友
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